自己組織法による分子配向した色素微粒子の作製


-研究目的-

 有機色素は、テクノロジーにおいて重要な光学材料の一つである。分子テクノロジーをフォトニクスに導入する際、基板上のディウェッティング現象を利用した。ナノサイズレベルでの色素のディウェッティングのコントロールが重要になる。これらの技法が可能になれば多くの有機色素分子種に応用する事が出来る。ここでは、ディウェッティング現象による色素微粒子の自己組織配列の変化を作製の条件を変えて検討する。
 励起光の偏光方向に依存した蛍光強度を測定することにより、微粒子中での分子配向を同定する事を目的とする。基板との静電相互作用、溶媒・基板界面での表面張力の作用がどのように微結晶生成に影響するのか。 
 



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。  表面を親水処理を行ったカバーガラスとガラスロッドを使用し、図1のようにガラスロッドを回転させ溶媒薄膜を形成し溶媒が揮発させ、自己組織的形成された色素微粒子を図2の蛍光顕微鏡で観測し、天体観測用CCDカメラで観察します。本研究で使用する色素として、配向    を持ちやすいとされるNK1420とローダミン6Gをしようしました。
 溶媒が揮発してゆくと表面張力により多数の微小な液滴に分かれ、色素分子がこれらの内部に集合する。静電荷をもつ色 素分子間の相互作用と表面張力の作用により分子配向した特徴的構造をもつ微粒子が自然に形成される。



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。  Rh6G、NK1420二種類の色素微粒子の濃度を変化させた場合色素微粒子の大きさや形状、色素微粒子同士の間隔がどのように変化するのかを観測した。
 図3ではRH6Gを0.25mg/mlから半分ずつ薄めた反射像で濃度を薄めることによって微粒子が小さくなっています。が、微粒子同士の間隔は変化しないことが観察できました。



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。  1つの微粒子の中の分子の向きを調べるためにS偏光、P偏光の偏光板を入れて測定します。図4より、ガラス基板の表面でレーザーを全反射させたエバネッセント場でガラス基板の表面から厚さ100ナノメートルの間にある試料を励起した光で観測します。



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。  これはエバネッセント場で色素微粒子濃度を変化させ撮影したものです。それぞれ左からエバネッセント場、偏光板を縦に入れた場合、最後に偏光板を横に入れた場合です。
 ここで見ていただきたいものとして緑で囲っている色素微粒子はp偏光では蛍光が消えており、s偏光では光っているのが観察できます。これは色素微粒子がs偏光を向いているのがわかります。また赤で囲んだものは逆でp偏光の色素微粒子を観察しています。



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。  これも同様に撮影したものです。微量ですが分子の向きが異なるのが見られます。



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。  分子がこっち向きに並んでいるとすると。この時θを求めるには、左の式より求まります。  
 P偏光時の光の強さをIp、S偏光時の光の強さをIsとし先ほどの式でθを計算し微粒子の方向を測定します。



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。  緑で囲んだA〜Cは分子が横方向に向いていて、黄色で囲んだL〜Qはほぼ45度に向いていて、赤の囲んだD〜Kが縦方向に向いていることが観測できます。  



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。  有機色素は一般にその会合状態に依存して特徴的な発光スペクトルを示すことが知られている。各微粒子について各々の発光スペクトルを高感度冷却CCDカメラで計測し(図4)、微粒子内での分子の並び方を検討する。
 二つのグラフを比較するとまずスペクトル波長の幅が違うのが観測できた。溶液時のグラフでは熱運動により分子が動いているために幅が広いのではと考えられ。また、色素微粒子のスペクトルはエネルギーが小さく安定しているのが観察出来きる。これにより右上の図は結晶になっていると考えられる。



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。  図8はNK1420の濃度を変化させた場合の反射像を撮影したものです。ここではローダミン6Gでは濃度が濃い場合に不定形であるのに対しNK1420では濃度が濃い場合でも一つの色素微粒子の形がはっきりと観察出来る。また大きさに関しても濃度を薄めることにより微粒子の大きさも変化するのが観察できる。



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。  図11はNK1420の濃度を変化させた場合でのエバネッセント場の発光図です。ひだりから無偏光、s偏光、p偏光という順になっています。ローダミンと同様に緑で囲んだ結晶はp偏光、赤で囲んだ色素はs偏光の配向を示しているのが観察できる。



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画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。  次にNK1420の色素微粒子の場合と溶液時のスペクトル測定をした場合スペクトル波長の幅が溶液時の場合よりせまいことからエネルギーは安定しており結晶にはなっていますが配向が揃っていないと考えられる。



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。  図10の溶媒を変化した場合の色素の違いを観察した。(a)(c)を比較すると溶媒をエタノールからメタノールに変えた場合色素微粒子の大きさや色素同士の間隔などが変化が見られなかった。NK1420の場合エタノールを溶媒とした場合色素が溶けないため観察することが出来なかった。(b)のNK1420の色素微粒子の形が変化するのが観察できた。



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