顕微鏡試料回転機構の製作と色素微粒子内分子配向の観察


-研究目的-

 自己組織的に形成した有機色素微粒子内で色素分子がどのように並んでいるのかを検討するため、偏光エバネッセント場で励起して蛍光を観測しながら、励起偏光方向を90°連続回転させて強度変化を追跡する。 もしも一方向に配向していれば、いずれかの角度で蛍光は完全に消光し、これと直行する方向に分子が配向していることがわかる。
 最低/最高蛍光強度の比から、分子配向の程度も評価できると期待できる。
 



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。  S偏光でエバネッセント場を発生させた場合、エバネッセント場はY方向に偏光する。S偏光というのは入射面に対して垂直な偏光なので、Y方向を向く色素分子の場合では明るく蛍光を出すがX方向を向く色素分子の場合では全く蛍光を出さない。
 試料を基板ごと図1のS偏光の場合、Θ方向に+30°回転させると、電界の向きと一致するのでこの色素分子は最大の蛍光を発する。P偏光でエバネッセント場を発生させた場合、エバネッセント場はーX方向に偏光する。P偏光というのは入射面に対して平行な偏光なので、Y方向を向く色素分子の場合では全く蛍光を出さないが−X方向を向く色素分子の場合では明るく蛍光を出す。試料を基板ごと図1のP偏光の場合、Θ方向に−60°回転させると、電界の向きと一致するのでこの色素分子は最大の蛍光を発する。



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。   試料を基板ごと図1のS偏光の場合、Θ方向に+30°回転させると、電界の向きと一致するのでこの色素分子は最大の蛍光を発する。ローダミン6G(Rh6G)とNK1420は図2に表したような分子構造の有機色素で共役π結合にそって電子が分子を移動できるのでこの方向の光の電界がかかると電子が振動して光を吸収し、発光もこの方向の偏光になる。



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。  図3よりオゾンで親水処理した基板表面に色素溶液を滴下し、ガラスロッドをのせて一定の力で押しつけて転がすことで色素溶液を均一な厚さに薄く広げる。
 ガラスロッドを転がした後、形成された色素溶液の薄膜の溶媒が揮発してゆくと表面張力により多数の微小な液滴に分かれ、完全に溶媒が揮発し、色素分子がこの内部に集合するので分子配向を持った特徴的な構造をもつ微粒子が自己組織的に形成される。
 図4の反射像で撮られた微粒子は図5の蛍光像で光っているため色素分子だとわかる。



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。  屈折率の異なるスライドガラスにインディグマッティングオイルをつけて試料がついたカバーガラスを光学的に結合し、プリズムに対して光を入射させると、入射角が小さい場合は透過光と反射光が発生する。入射角を大きくしてゆくと屈折角が90°に達し、それ以上の入射角に対して反射光のみ観測される。
 微粒子を発光させるためにガラス基板界面にレーザー光を全反射させ、発光したエバネッセント場で微粒子を励起する。さらに偏光板を入れて励起光のエバネッセント場の偏光方向を変え同時に試料を回転させ偏光方向と分子の相対的な角度を連続的に変化させ、測定する。



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。  図7の回転機構の必要条件の一つとして、回転時に試料が視野外にいかないようにする必要性から対物レンズと回転中心を一致させる必要がある。二つ目として、回転後の試料とのピントのずれをなくすため、上下に揺れずに精密に回転する必要がある。三つ目として、エバネッセント場を発生させるプリズムが設置させるために大きな開口がある必要がある。四つ目として、ピントまでの距離が回転機構が厚いとピントがあう距離がなくなるため、厚さが薄い必要がある。五つ目として、多くの試料が出来上がるために多くの場所を測定するため、視野をX−Y方向に試料を精密に動かすことができる必要がある。この条件で回転機構を作製し、図8のように顕微鏡内に組み込みました。。



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。  図3で示したディウェッテイング法でガラスロッドが基板上を転がした方向を0°とし、30°、60°、90°を撮影したものを図10で示す。四角は回転している様子を表してして、赤く丸で囲まれた色素分子が回転していることがわかるため、回転機構が精密に機能していることがわかる。角度の違いによる発光の違いを見ると、一番明るく発光している色素分子はΘ=60°とΘ=90°で明るいが、わずかにΘ=60°の方が明るいことから図9の0°の画像上で色素分子方向が70°ぐらいで最大になると考えられる。



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。  次にNK1420の色素結晶の角度ごとの画像を図10で示す。図10より緑で囲まれた色素分子はΘ=10°の時は0°でいうと右下が光っていてΘ=30°の時は0°でいうと右上が光っていてΘ=50°の時は全体で明るく見える。赤で囲まれた色素分子はΘ=30°の時に見えている色素分子はΘ=50°の時では光らないで別の色素分子が光っている。青で囲まれた色素分子はΘ=20°で明るく見える。黄で囲まれた色素分子はΘ=80°とΘ=90°で光っているという結果が得られた。



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。  P偏光を用いたので、光が最も強い角度で微粒子は横方向を向いている。 図10の結果から0°の偏光板を入れてない図11に分子方向を上記の方法で記入した。記入した結果から結晶内では様々な分子方向が見られ、縁の方向と分子の方向が一致しているので結晶の成長モデルと一致する。