有機色素をドープ薄膜したポリマー導波路の作製と増強自然放出の観察


-研究目的-

 本研究では、透明ポリマーの円筒及び平面導波路中に有機色素をドープし、コヒーレントな増強自然放出を起こさせることを目的としました。



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。    導波路である薄膜を作成するための支持体としましては、「光ファイバー」と「切断したスライドガラス」を用いました。その際に、ファイバーでは蛍光を集めるレンズを上に設置、し、下向きの観測点を置くことにより迷光が入射しにくくし、ノイズが出ないように工夫をしました。また、平面導波路で使用するスライドガラスは、蛍光が散乱しないように側面を磨くこと、で、測定を行いやすいように工夫をしました。
 円筒導波路では、励起光を光ファイバに横から当てることにより、発生した蛍光が薄膜表面とファイバとの反射により、共振器として働き、増幅された蛍光が様々な場所から発生する、というこの図にあるようなマイクロリングモード共振器モードが観測できる、と予測しました。
 平面導波路では、長方形に整形した励起光を当てるため、横方向に発生した蛍光が増幅され、側面から増幅された蛍光が観測できる、と予測しました。



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。  実際に薄膜を作る試料としましては、円筒導波路の場合では「パイロメテン597」をクロロホルムで溶かし、同じくクロロホルムに溶かした「PMMAポリマー」を混合して使用しました。
 平面導波路の場合では、「MEH-PPV(メトキシーエチルーヘキソキシ ポリフェニレンビニレン)」をクロロホルムで溶かして使用しました。こちらは先ほどのパイロメテンと違いポリマーを自身で形成しているため、PMMAポリマー等を混合させなくても測定は可能でした。今回しようする試料はこちらに表しています。MEH−PPVにはPMMAポリマーを混合しない為、クロロホルムとの比を表示しております。
   また、吸収スペクトルはこの図になります。吸収スペクトルは500nm付近が吸収されやすい波長になっている為、本研究では、励起光は525nmから532nmを使用することにしました。



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。  試料に薄膜を塗布させる方法としてはディッピング法を用いました。
 この方法は、試料である溶液を入れたバイアル瓶に一定の速度で浸し、一定の速度で取り出す方法であり、均一の厚さの膜を媒体に塗布させることができます。このディッピングを皮膜を向いたファイバと切断したスライドガラスに行い、計測行いました。
 しかし、スライドガラスにディッピング法を用いて薄膜を塗布させた試料では蛍光の観測ができませんでした。その為、別の方法の導波路の作製として、スピンコート法を使用しました。



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。 このスピンコート法はスライドガラスを中心の台に固定し上から試料であるMEH-PPVを適量垂らした後に、高速で回転させ、遠心力により薄い均一な薄膜を塗布することができました。また濃度変化により膜厚をコントロールしました。



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。  励起光は凹レンズの集光する光を通すと光の太さを適当な太さを保ったまま透過させる、という特性を利用し、可変波長レーザを完全には集光せず、凸レンズと、その焦点距離までの間に平凹レンズを入れることにより、ファイバーに光を一定の強度でムラなく当てることを可能にしました。



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。  蛍光を発生させる方法として、蛍光色素をドープした円筒導波路に励起光に当てることにより、固有の共振モードを成立させ、発生する蛍光を大きく出す。マイクロリング共振器モードという方法を使いました。  
 そのほかに、蛍光色素を平面導波路に塗布し、さきほどと同じ方法で平面導波路共振器モードで行う。二つの方法で観測しました。
 円筒導波路の観測の場合、波長可変レーザから放射される励起光をNDフィルターで変化させ、凸レンズで励起光を集光し、平凹レンズでコリメートした励起光を円筒導波路に当て、円筒導波路の上部に発生した蛍光を凸レンズでコリメートし、凸レンズで集光して、スペクトロメーターで観測しました。しかしその場合、励起光が観測の妨げとなるので、ダイクロイックミラーで励起光をカットします。  



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。  平面導波路の場合、平凹レンズを使わず、集光された励起光を平面導波路に当て、平面導波路の側面部分に発生した蛍光を対物レンズでコリメートし、対物レンズで集光した蛍光をスペクトロメーターで観測しました。  



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。  円筒導波路の観測では、パイロメテンとポリマーの組成は7.5*10−3対1と5*10−4対1の二つの溶液を作成し、円筒導波路にドープしました。 そして観測した結果をグラフにしたものです。グラフの二つの波形を見ると、どちらもブロードなフォトルミネッセンスが発生し、615nm付近に蛍光のピークが現れた。。  



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。 先程の結果を励起光強度を横軸とASEのピークの最大値を縦軸に折れ線グラフにしたものです。 グラフをから、閾値が存在し、閾値を超える励起光強度に比例したピーク強度励起光が発生していることがわかります。  



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。  平面導波路の観測では、MEH−PPVとクロロホルムの組成2*10−4対1と5*10−5:1と5*10―6:1の三つの溶液を作成し、平面導波路に塗布しました。  そして観測した結果、波長の660nm付近に蛍光のピークが観測でき、蛍光の頂上の小さいスペクトルがASEです。このグラフを見ると、MEH-PPVが薄い方がASEが大きく出るが、しかし、薄すぎると蛍光色素が死に観測できなくなります。



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。  蛍光色素と励起光強度は比例されるので、励起光を強くすれば、蛍光色素の励起される量が増えるので、微細なスペクトルを観測することができる。色素薄膜は薄くなるほど、ASEは鋭いスペクトルになります。これは、薄膜が厚いと蛍光色素分子も多くなるので、発生した蛍光が増幅するよりも吸収が増幅し、減衰してしまうためである。これからの対策としまして、酸素と化学反応を起こし、色素がすぐ劣化してしまうため、酸素の入らない真空状態で観測する必要がある。円筒導波路の場合、励起光で薄膜が溶けてしまっている可能性があるので、対策を考える必要がある。