温度制御された超高感度アバランシェフォトダイオード光検出システム


-はじめに-
 本研究ではアバランシェフォトダイオード(以下APDと呼ぶ)を使用して微弱光計測を行う。APDのメリットは検出限界が読み出し回路で決定されている場合に、検出限界をAPDの増倍率分だけ低いレベルに引き下げられ、通常のフォトダイオードの×10から×100に感度を向上できるところにある。しかしアバランシェ増倍過程特有の統計的なゆらぎによる過剰雑音が発生する。逆バイアス状態のAPD においては、光が入射しなくても、僅かながら暗電流が観測される。特に光子一つあたりのエネルギーが小さな長波長の光に対して感度の高い光検出素子においては、熱などにより容易に暗電流が生じるので、波長の長い光の検出の障害になりやすい。本研究ではAPD本体にペルチエ素子を使用することにより温度制御し、増幅率・暗電流を一定にすることにより出力を安定させることを目的とする。




画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。  温度制御回路は温度検出ブリッジ回路、PID制御回路、加熱・冷却ペルチエ駆動回路の3ブロックに分かれる。



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。  PIDとはP(比例)、I(積分)、D(微分)の3つの組み合わせで制御するもので木目細かな制御を実現できスムーズな制御が可能となる。
 特に初期設定時にIをOFFにでき、設定温度への到達を速くできる。



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。  操作量を目標値と現在値との差に比例した大きさとするようにして、徐々に調節する制御方法。
 目標値に近づくと微妙な制御を加えることが出来るので細かく目標値に近づけることが可能となる



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。  制御応答を速くする。
 外乱があった時の応答性能が良くなる。
 急激に起きる外乱に対し、前回偏差との差が大きい時には、思い切って操作量を多くし機敏に反応する。



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。  操作量が小さくなりすぎてそれ以上細かくは制御出来ない。この残留偏差を無くす。
 残留偏差を時間的に累積し、ある大きさになった所で操作量を増して偏差を無くす。



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。  TRM2,5を最大まで絞り(%I=0,%D=0)TRM4を開き(%P=1)比例増幅のみ採用。
 単純に反転増幅した波形が出力されているので比例増幅の波形といえる



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。 TRM2,4を最大まで絞り(%P=0,%I=0)TRM 5を開き(%D=1)微分増幅のみ採用。
 方形のプラスからマイナスの値に変化するときが90°に近い傾きが一瞬だけ微分されてパルスとなっているのがわかる。



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。  TRM4,5を最大まで絞り(%P=0,%D=0)TRM2を開き(%I=1)積分増幅のみ採用。
 入力された方形波から三角波が出力されているので積分が実現されているといえる。



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。  TRM2を最大まで絞り(%I=0)TRM4,5を開き(%P=0.5,%D=0.5) 比例増幅と微分を採用。 出力が単純に増幅した波形(矢印)と微分波形(○)との足し算と見てわかる。



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。  TRM2,4,5を開き比例,積分,微分部を同じ量にした場合である。それぞれの波形の特徴をあわせもつ比例増幅(矢印)、微分(○)、積分(楕円)が足されているといえる。
以上でPID回路の動作テストが完了し、正常動作が確認できた



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。  ペルチェ素子双方向に電流を流し加熱・冷却を行い。ペルチエ素子が動作しているのを確認した。



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。  ブリッジ回路にサーミスタをとりつけ電位差として温度差を読み取り、可変抵抗で温度を設定する。



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。 結果
3つの回路を作製し組み合わせてペルチェ素子の温度制御することに成功した。



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。 今後の展望
温度制御回路を用いてアバランシェフォトダイオードの暗電流のゆらぎがほとんど0になるかを確認する。