総合電子工学研究紹介教員紹介影島 賢巳
教授 影島賢巳


ナノメータースケールの物性計測

研究手法の中心の一つは、原子間力顕微鏡(AFM)という、微小な針の先に作用する力を高精度に検出して表面を観測する手法です。元来はその名の通り表面観察の手段でしたが、検出される力の性質を通じて物質のナノメータースケールの様々な性質がわかります。最近は特に、高分子や流体などの「柔らかい」物質がナノメータースケールで示す特異な物性にも惹かれています。力を介して弾性と粘性の両方を計測することで、水や高分子系の非ニュートン流体としての性格などを研究しています。また、各種の固体表面や固液界面の物性へも研究を広げていきたいと考えています。一口に力を計測するといっても、その対象によって装置の構成や計測法を工夫する必要があるので、必然的に装置や計測手法を新たに開発することと背中合わせの研究になります。


医学計測機器・計測法の開発

再生医療における新技術である細胞シートなど、著しく繊細な生体試料の力学的性質を計測する装置を開発しています。図のプロトタイプ装置では、電磁石を用いて微弱な力を細胞シートにあたえ、変形量を読み取ります。電磁石を制御することで、静的な力の他に様々な波形の力を与えて、動的な特性までも探ることが可能です。現在は、この装置を高度化してより実用的なものに近づける研究をしています。


反磁性を利用した磁気浮上とその応用

普通の磁性体間の相互作用では、空間中にポテンシャルエネルギーの極小点を作ることが不可能です。これはアーンショーの定理として知られています。しかし、負の磁化率を持つ反磁性体を併用してやると、空中に極小点を作ってそこに磁石を静止させることができます。これだけではただの磁石遊びでしかありませんが、磁石が非常に柔らかいバネで拘束された状態と見れば、これを高度化して微弱な力学相互作用の計測に応用できる可能性が考えられます。


その他の研究

研究の軸になるのは「力を計測する」アプローチですが、一口に力といっても様々な起源のものがあるので、様々な方向へ研究を発展させていける可能性があります。上に挙げたような研究の他に、電磁場(光)が関与する電磁気学的力学現象などにも関心を持っています。